2017年7月10日

2017年連続ドラマ視聴率を予測する シリーズ第3回

さて、前クール2017年4月期のドラマもひと通り最終回を迎え、前回レポートでお伝えした途中経過から、最終結果が出ましたので、そちらをご報告したいと思います。

前クール連続ドラマ最終回視聴率予測結果

では、早速まいります。
その前に、今回の分析対象のおさらいから…

■2003年1月期~2017年4月期までの地上波プライムタイム(19時~22時台)全国ネットの民放4局(日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日)の連続ドラマ

■上記に付随する、放送曜日・時間帯、ドラマジャンル、各話視聴率、平均視聴率(※)、主演、出演者、プロデューサー・監督・脚本などの付帯情報全般、あらすじデータ

■MSDBより抽出した上記データのうち、ドラマあらすじから感情分析エンジンで感情スコア値を算出

(※)過去視聴率実績出典:「ビデオリサーチ社調べ」

予測モデル構築に関する詳細は、以下の過去シリーズをご参照ください。
視聴率予測シリーズ第1回
視聴率予測シリーズ第2回

9週目視聴率予測モデルプロトタイプ版結果 こちらは、初回に構築した前段のプロトタイプ版予測モデルで、9話視聴率を予測した最終結果となります。前回レポート(2017/6/14リリース)で途中経過時点で外れ値となった要因を分析、それを元に、予測モデルをチューニングし最終回視聴率予測を出しましたが、こちらの初期モデルは結果として、4勝6敗2引き分けで正解率40%での着地となりました。そして、本番最終回視聴率予測を行ったチューニング後モデルの予測結果が以下となります。

最終回視聴率予測モデルプロトタイプ版結果 結果、7勝2敗2引き分け、正解率78%となりました。チューニングで、かなりの精度アップを実現できましたが、±1.0ポイント以上の誤差が出てしまった2敗は、後半じわじわと視聴率をアップさせてきたTBSの火10時枠「あなたのことはそれほど」と、安定した視聴率推移を示していた、こちらもTBSの日9時枠「小さな巨人」でした。

前クール予測結果考察

予測を外してしまった2つについて分析、その考察結果をご紹介します。

●TBSの火10時枠「あなたのことはそれほど」 +2.0ポイント差
こちらは前回のレポートでも触れたとおり、スポーツの生中継や特番などが同時間帯に放送されることによる影響、つまり、数理モデルにおける変数不足により、予測値にブレが生じたと言えます。
2017年4月期ドラマ最終話直前の移動平均降下度 右記の図は、最終話直前の『移動平均下降度を表したグラフ』ですが、こちらからもわかるように、最終前話の裏でサッカーのW杯アジア最終予選イラク戦が放映されたことにより、最終付近(前週~前々週)における移動平均における外れ値(下振れ)が発生しました。そのため、一番盛り上がる最終回直前で離脱した誤差3ポイント以上の視聴者が、そのまま最終に向けての関心度がそられてしまったのではないか、という仮説となります。直前の予測であればまだしも、予測時にイベントが発生するかどうかは分かりません。それも踏まえてこの影響を吸収できるよう、過去の事例抽出、分析し、次回チューニング時に変数を組み込み、改善を図りたいと思います。

●TBSの日9枠「小さな巨人」 -2.2ポイント差
こちらは、直近のトレンド指数を加味していなかったことでの誤差と考えています。時代の流れとともに何事も流行り廃りがありますが、ドラマにも時代や時期ごとにヒットの法則的なものがあるとしたら、本作は大ヒット作「半沢直樹」と同じ、日9時枠で、助演に香川照之さん、「半沢直樹」「下町ロケット」も手掛けた八津弘幸氏が脚本協力で参加していました。
「半沢直樹」と「小さな巨人」の感情スコア また、右記の通り、あらすじからの感情スコア値を見ても、「怒り・苛立ち」が高く、制作側は「半沢直樹」を意識し、視聴者もそのように認識していたのではないでしょうか。実際に、2つのドラマの感情スコア値傾向も非常に似ていました。
本作は、初回より高視聴率を維持しつつも、最終以前の値はそれほど上振れもなく下振れもない状態で推移していましたが、最終で大きく跳ねたのは過去作品での実績を拠り所とした潜在的視聴者の流動における結果と理解できます。多くの視聴者が「半沢直樹」で共感・評価したであろうポイントの再来に期待した現れではないでしょうか。
ヒット要因は多数あれど、それがたまたま単発で受けることもあれば、主流になることも、逆に二番煎じとして不評を買うこともあります。
前回、チューニングで、Twitterコメントからの感情スコアを盛り込みましたが、こちらとは別にさらに、ドラマに付随した話題性や好感度、またトレンドの共感軸をスコアリングした重みづけを加味するなど、今後検討していきたいと思います。

感情スコアからの考察

また、2003-2017年1月期までの過去の連続ドラマデータの事前分析でも、視聴率と最も影響度が高かったのは「昂ぶり・興味」だったと第1回レポートでも少し触れましたが、そちらを分かりやすく表にした結果がこちらになります。

平均視聴率帯別ドラマあらすじ感情スコア値が高かったものの割合 こちらは、平均視聴率帯ごとに該当するドラマを仕分け、各ドラマで突出していた感情をカウント、各平均視聴率帯を100%とした時のそれぞれの割合を出したものです。『ドラマティック』という形容詞(意味:劇を見るように感動的、印象的であるさま。劇的。)があるように、全体的に「昂ぶり・興味」が高くなる傾向がありますが、その中でも平均視聴率20%以上を記録したドラマでは特に大きな割合を占めています。

また、2017年7月期連続ドラマのドラマキャッチコピー、紹介文から感情スコアを算出してみた結果がこちらとなります。

2017年7月期ドラマあらすじの感情スコア値が高かったもの 7月期夏ドラマは全体で見ると「希望」「昂ぶり・興味」「哀しみ」が高めの傾向にあるようです。ちなみに、前クールドラマ全体で見たときの感情スコアは「哀しみ」「昂ぶり・興味」が高めとなっていました。
このあらすじ感情スコア、またTwitter感情スコアの傾向については、まだ解明しきれていないことが多いため、もう少しデータ量を増やしつつ、さらに検証・考察していきたいと思います。

2017年7月期ドラマの初回視聴率を予測する

さて、最終回視聴率予測は、前クールで予測しきれなかった2つの敗因を改善すべくチューニングを加え、改めて再度予測したいと思いますが、今回新たに、初回視聴率予測に挑戦したいと思います。最初か最後か、一見大きな差はないような気がしますが、最終回予測モデルで加味していた初速実績1~3週目視聴率の移動平均などは利用できませんし、まさにゼロベースでの予測となり、ドラマ自体の視聴者吸引力(ドラマキャッチコピーや紹介文、キャスト、プロモーション他)と、それに対する視聴者の期待値と、その動向(視聴者がそのドラマをリアルタイムに楽しむのか、録画などで楽しむのか)をどう読むかがポイントとなってきます。

2013 – 2017年期のシーズン別での平均視聴率 その前に、事前分析として、直近2013 – 2017年期のシーズン別での視聴率を確認してみました。やはり夏休みやお盆の傾向か、レジャーシーズンの夏場は初回~最終回平均の視聴率が伸びずに下がる傾向があるようです。ただ、初回視聴率に関しては新生活がはじまり、あわただしい春に比べて夏場はさほど考慮の必要はなさそうです。

ということで、初回視聴率予測用に新たなモデルを構築していくこととしました。
まず、ベースはもちろんソケッツ感情エンジンで算出したあらすじの感情スコア値です。こちらはある意味、最終回視聴率予測での利用に比べ、事前に視聴者へ向けて発信する訴求内容としてさらなる重要性をもっているかもしれません。さらに前回、最終回視聴率予測モデルのチューニングで精度アップに貢献した過去ジャンル時間平均、また主役、出演者などの過去視聴率寄与スコア、また視聴者の期待値を反映する意味で、放映前に公式Twitterアカウントがあるかどうかと、あった場合の放送前「いいね」数を加味したモデルとしました。
さらに、プロモーションや視聴者吸引力という意味では、主題歌における期待度も加味したいところではありましたが、こちらは現在、別軸で指標となるスコアリングを構築中のため、そちらの完成を待って今後採用を検討したいと思います。他にもまだまだ盛り込むべき視点、考慮すべき点があがりましたが、まずは重要と思われる要素を柱とし、さらに根拠や精度が確認されているものを中心としたシンプルなモデルで行くこととしました。

ソケッツドラマ初回視聴率予測モデル・プロトタイプ版

そして、上記モデルで予測した結果はこちらになります。

2017年7月期ドラマ初回視聴率予測値
本モデル、最終回視聴率モデルのように、過去実績に当てはめての検証はできていません。なぜなら、今回、放送前の視聴者の興味・期待値を測る手段として、番組公式Twitterアカウントの有無と、スタート前「いいね」数を加味しているからです。
ドラマ連動型の公式Twitterアカウントが対象ドラマすべてに揃っているというのは非常に特徴的でもあり、ソーシャルメディアなどWeb上における話題性や連動性を意識したドラマにますます近づいてきていることの現れかもしれません。そうした意味で、ソーシャルインフルエンサーである渡辺直美主演ドラマ「カンナさーん!」がどれだけ数字をとるのか、今後に少なからず影響を与えるであろう、その動向に注目したいと思います。
また主演クラスの俳優陣が助演として脇を固めているものが多く(黒木瞳、大竹しのぶ、栗山千明、蒼井優、山口智子、浅野温子、三田佳子、鈴木保奈美)、初回、または初回以降の伸びなど、どのように視聴率推移に寄与するのかも結果との答え合わせをしながら、初回視聴率予測モデルや最終回視聴率予測のチューニングで取り込んでいきたいと思います。
まずは、最終回視聴率モデル同様、こちらの結果を元に今後のチューニングを重ねていくことを方針として、まずは最初の一歩を踏み出してみたいと思います。
さて、最終回視聴率のようにある程度の結果を出すことができるでしょうか…?!

最後に

本シリーズも第3回となり、さらに新たな挑戦レイヤーに突入しました。実は今回の初回視聴率予測こそ、その時代に求められるキャストや構成を事前にとらえ、ヒット予測を行う、というソケッツが目指す本質があると思っています。ただこちらの予測は、先に少し触れたとおり、最終回視聴率予測以上にまだまだ加味する点、検討すべきこと、クリアすべき課題が多々あるのも事実です。最終回視聴率予測も今後まだまだチューニングを重ね改善していく余地はありますし、こうした様々な研究開発での挑戦、その結果~の分析、考察、改善の積み重ねが、現在ご紹介しきれていないソケッツの取り組みには重要な要素のひとつともなっています。
今後も、人の感情・感性がキーとなるエンターテイメント分野で、データを活用した予測科学で新たな支援やバリューを生み出していきたいと思います。

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