社長からのメッセージ(株主通信2023年12月より)

株主の皆様、いつもご期待を頂きましてありがとうございます。
一方で、なかなかご期待に応えきれずにおりまして申し訳ありません。当社の株価は1年前の15〜20%上昇に留まっています。この間の日経平均の上昇幅は20%程度なので、当社の株式ならではという部分で、喜んで頂いた方はあまりいらっしゃらないのではないかと思います。当社のような規模の会社は、やはり数倍以上の成長を持って初めてここまでの様々な方から頂いたご縁やご恩にお返し出来るものだと考えております。そして、どのような言葉よりも結果で示して欲しい、という声もあると思います、実際その通りかと思います。
2024年3月期決算の状況、半期を過ぎた時点で、売上対前年比7%増と僅かながらの増加となっております。ポジティブな要素としては、前々期、前期と連続増収の流れは出来てきており、この流れは通期を通じても確かなものだとは思います。一方で利益に関してですが、規模は縮小してきているもののまだ赤字であり、利益以上に実行している先行投資含みの背景はありながら、やはりここは課題です。この課題解決については通期をもって進めてまいります。

事業の現況をお伝えさせて頂きます。当社は感性メタデータを中心とした独自データを活用した感性AIを用いて音楽・映像関連のデータサービスを提供する会社ですが、前期より感性マーケティングというインターネット広告サービスを開始し、現在では、音楽データサービス、映像データサービス、感性マーケティングサービスという3つのデータサービスを展開しております。

まず音楽データサービスですが、こちらはLINE MUSIC様、レコチョク様、楽天グループ様、LINEヤフー様などへの音楽データやレコメンド(楽曲やアーティストの推薦機能)サービスの提供をさせて頂いておりますが、いくつかの大きな流れがあると思っております。
一つめは、Apple、Amazon、Spotifyなどグローバル企業様の音楽サービスとの機能性の比較という視点です。少なくともグローバルサービスと同等の機能や品質はまずあるべき、というところから始まり、そのうえで、いかにこれらグローバルサービスでは実施していない日本ならでは、邦楽ならではの楽しみ方、音楽体験を実現する独自機能の開発が求められていると思います。
よりインスタントで直感的な音楽との出会い、このあたりを邦楽という洋楽に比べてジャンルが体系化しづらい分野において実現することで、日本の音楽サービスの発展に貢献出来ればと考えております。具体的には、生成AIを活用した新しい音楽体験機能の企画開発なども進めています。
二つめは、日本の音楽がどのように海外でより広まるか、という視点です。
やはり韓国などと比べても日本のアーティストや楽曲が海外で広まることはまだまだ限定的だとも思います。
要因として様々な背景がある中で、海外向けのデータを整備しただけでは解決しない課題だとは思いますが、一方で日本の各種音楽関連データを海外でより利用出来る状況にするためにまだまだこれから出来ることがあり、そのための手段の一つとして複数の海外の音楽データ関連企業とのアライアンスを進めております。当社音楽データを海外で利用する状況をたくさん作ることで、結果として日本のアーティストの楽曲が海外においてより聴いてもらう機会が増えることに繋がればと考えております。
こちらは日本独自のアニメ文化なども絡ませながら具体的に進めてまいります。
三つめは、カラオケのAI化という視点です。一定の成熟市場ともいえるカラオケも日本ならではの文化だと思いますが、昨今のAI技術の進化は、久々にカラオケ市場を活性化する可能性があり、そこに当社の各種音楽データサービスを活用頂ければと考えております。
結果的にカラオケを通じた新しい音楽体験に貢献することで、音楽市場の進化や拡大に繋がればと思います。
四つめは、音楽データのマーケティング利用という視点ですが、こちらは後ほど触れることが出来ればと思います。

次に映像データサービスですが、一つめ、ここは短期的には、アニメ関連データの充足が重要かと考えております。アニメ関連データといっても裾野は広く、映像配信サービスのみならず、マーチャンダイズ(グッズ関連)、イベント関連、興行、放送サービスまたは、制作スタジオ、または原作となりえるライトノベルやコミックに至るまで、今後のアニメ関連メタデータの活用機会は一層広まる中で、独自データの開発を進めてまいります。そしてこれらの独自のアニメ関連メタデータをその後、海外に展開することで、映像データサービスの規模を一段と大きくすることが出来ればと考えております。ひとことにアニメ関連データといっても、とても幅広く深く細かい領域があり、着実に丁寧に関連データ開発を進めていければと考えております。
二つめとして、アニメのみならず従来からデータ制作をしているテレビドラマ、バラエティ、邦画までにわたる、それぞれが連携可能な日本ならではの映像データサービスの開発をしていければと考えております。これらの横断的なコンテンツの回遊性が出てくる中で、これからの放送やインターネットを通じて映像視聴機会の増加における重要な要素、レコメンド機能またはマーケティング機能に有用なデータや技術の開発と提供を進めてまいります。
三つめとして、映像配信サービスにおける無料視聴という流れは今後加速すると思います。米国ではFASTチャンネル(Free Ad-Supported Streaming TV)という無料インターネット放送サービスが急速に伸びてきています。いわゆるコネクテッドTVというインターネットに接続されるテレビが増える中で、従来のテレビ放送のような受け身的なテレビ放送ならではの楽しみ方をするという時代がひと回りする中での大きな流れですが、ここにも従来にない映像メタデータやデータ技術の活用の機会があります。この領域において今後の重要な事業機会のひとつとして取り組んでいければと考えております。そのことで、日本の映像作品や番組の視聴機会の拡大と映像文化や市場発展に寄与出来ればと考えています。
四つめは、音楽同様に映像メタデータのマーケティング利用ですが、こちらは音楽データと合わせてのちほどお伝えすることが出来ればと思います。

昨今、私が言うまでもなく、現在の日本のエンターテイメントの世界は大きく変わってくる節目にあると感じています。様々な先達の方々が作り上げてきた文化、風習、基盤など、守るべきところは守り、変わるべきところは変わっていく、という流れが一層速くなるのだと思います。
このような中、当社に出来ることは微力ながらも、エンターテイメント関連のデータやデータ技術によって、これから起きるエンターテイメント市場の進化や発展に貢献出来ればと考えておりますし、そのような機会は実際増えつつあります。しっかりとその責任を果たしたいと考えております。

そして、先ほどからの音楽データや映像データのマーケティング利用もそのような中で、一層重要性を持つものと考えております。従来から株主通信などでもお伝えさせて頂いてきたように、マーケティング、つまり企業と生活者のコミュニケーション活動の中で、以前よりタイアップや協賛など、企業とエンターテイメントとのコラボレーションは多くありました。一方でそれらは、大きな企業と有名なエンターテイメント(アーティスト、楽曲、タレント、映像作品など)との関係の中で主に進んできました。もちろんスケールメリットを考えれば、それらは当然のことで結果的に効率的であったとも言えます。一方で、その実施した効果が実際には分かりづらかったり、一度のキャンペーンの成果の再現性や継続性をどのように科学的に解釈し向上させていくかなどの課題もあったかと思います。エンターテイメントが持っている「人間の感情を増幅する」ことが出来る力を、あらゆる業界の企業が今後、一層活用をしていくためにどのようなデータや技術が必要か、また予算をたくさん持っている大きな企業やファンがたくさんいる有名なエンターテイメントだけでなく、大小問わずにこれからの商品や企業、これからのエンターテイメントがどのようにコラボしていけるか、このあたりに当社の感性メタデータ、感性AIの応用範囲があります。
またこれらのコンセプトを補充しさらに発展させる技術として、NFTというような新しい技術もますます進化し利用価値が上がります。具体的には、企業とエンターテイメントとファンと生活者の定性的な繋がりの証明書のようなものをNFTという技術に任せたいと考えています。まだまだこれからの面はありますが、今期中にモックアップの開発を行い、来期に具体的なPoC(コンセプト検証)を可能性を共有し得るアーティスト、クリエイター、企業の皆様と共に行い、良い報告が出来るように進めてまいります。

そしてこれらの活動をより確かなものする役割を持ったものでもある、前期に立ち上げた感性マーケティングサービス、具体的にはインターネット広告サービス「Trig’s」についてお伝えさせて頂きます。
クッキーレス、つまりインターネットの利用履歴や属性情報を基本使わずに、人の感性や情緒に訴求し、企業と生活者の気持ちを繋げることを目的とした広告サービスとして、昨年夏に商用開始された「Trig’s」ですが、お陰様でここまで着実に成長してきております。
具体的には、広告出稿を頂く企業様(クライアント)の数、出稿金額、出稿単価、広告成果の重要な指標の一つであるCTR(クリック率=記事や広告を実際に見る確率)、広告掲出の場所である媒体社様(ウエブメディア)の数、全てにおいてここまで伸びてきています。
現在は、事業規模をより大きくすること、成長スピードを上げていくことに注力しています。
世の中には、様々なウエブメディアがありますが、大小問わずですが、やはりコンテンツや記事をこだわりを持って丁寧にしっかり制作されているウエブメディアは、非常に価値が高いと思っています。この価値をよりお金に変える、その価値を向上させることに貢献出来ればと考えています。一方で、あらゆる企業の製品やサービスも、やはり多くの研究者、開発者、マーケッターの方々が想いやこだわりを持って開発、提供されていると思います。これらの方々のこだわりや想いは、全てとは言えませんが、必ず一部の生活者の方々にとって今以上に共感出来るものだと思っていまして、それらの共感が繋がるきっかけを「Trig’s」で創ることが出来ればと考えています。少し良い具体的な報告としては、夏の終わりから秋にかけて、ある女性向けの製造メーカー様における広告で、インスタグラム、エックス(旧ツイッター)、ピンタレストなどの海外勢4社のインターネット広告サービスと当社「Trig’s」の合わせて5社で、同期間同一広告で効果比較を行いました。
結果としては、CTR、CPC(クリック単価)、CPA(効果獲得単価)、情報滞在時間などの様々な指標がある中で、総合的に2番目の結果となりました。さらに言えば、当社「Trig’s」以外は、履歴や属性情報を活用しクッキーレスは当社「Trig’s」のみということなので、いわゆる潜在顧客の開拓という意味でも、いったんの有用性が証明されたと言えます。
もちろん、とはいえ2番、1番ではないですし、もっと各種数値も上げていく必要があると思っています。一方でここまでたくさんの開発投資に理解を頂いてきている株主の皆様のお陰様もあり、着実な成長をしております。繰り返しとなりますが、この成長の規模とスピードを上げるべく邁進していきます。

また、感性AIを開発する会社として、生成AIとの現在の向き合いを最後に報告させて頂きます。感性AIの元となっているのは、感性メタをはじめとした各種メタデータでありますが、こちらは各分野(エンターテイメント、食、健康、美容、ファッション、旅、暮らしなど)の専門データで構成されております。生成AIのいわゆる「汎用的になんでも解釈出来る技術」や「即時に何かしらレスポンス出来る技術」と当社の専門データの特徴である「専門的で詳細な構造化されたデータ」「人が解釈しやすいトレンド性をもったデータ」の掛け合わせに大きな可能性を感じ、具体的な連携の開発を進めています。生成AIは当社感性AIをパワーアップさせます。

株式会社ソケッツ代表取締役 浦部浩司最後に重ねまして、まだまだご期待にお応え出来ていない状況にお詫びいたします。
変わらずに応援くださる方がいらっしゃることも感じています。
ご期待に応えます。いつもありがとうございます。

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