社長からのメッセージ(株主通信2025年6月より)

みなさま、半年ぶりのお手紙となります。
重ねましてご関心とご期待に心より御礼を申し上げます。
ありがとうございます。
現在の振るわない株価、連続した赤字、株主の方々からすれば、お詫びや反省などいらないから、早くちゃんと結果を出してほしい、ということだと思います。
おっしゃること理解します。ここでいう結果とは、短期的には株価や黒字化は当然とした業績向上、中期的には、当社ならではの価値ある社会課題の解決や日本のエンターテイメントの未来への貢献を通じた企業価値の継続した向上、だと認識しております。

昨年の9月に当社としては大きな判断を行いました。ここまで感性AIをはじめとした研究開発をとにかく先行させて並行して事業拡大を図る、という取り組みにおいて、なかなか足元の結果が伴ってこないアンバランスな数年間でした。このアンバランスを断ち切った上で次へ向かう、言い換えると、研究開発費以外のところには全てのところにメスを入れてでも、体質改善を図る、という判断を行いました。生産性を上げて原価率を下げる、販管費を効率化してコストを下げる、それらを徹底しつつ研究開発だけは集中して行う、かつそれらを売上は伸ばしながら、あたり前と言われるとは思いますが、それらの収益基盤の改革を徹底しやりきる、大きくいえばそのようなプランとなります。
それぞれ明確な数字目標を持ち、リーダーチームで分担し1年計画で進めてきました。
やりきる、という文化がこの会社には私も含めて足りないと感じ、とにかくやりきる、ということを念頭に進めてきました。今、8ヶ月ほど経ち残り4ヶ月、一部に3ヶ月延長する項目もありますが、現在の進捗としては90%ほど当社目標の達成が見えてきました。
やりきります。
次へ進むために徹底して収益基盤を大きく改善する、これらの取り組みはリーダー、社員にはそれなりの負担がかかってきたと思いますが、現状みんなで力を合わせ、なんとかもう少し、という状況です。
株主様にもこのような機会を頂き、感謝しています。
原価率、粗利率、販管費などの数字は目に見えて良くなってきました。
まだ出来ることはあるので次の9月までしっかりと進めていきます。
また売上も前年を着実に上回るペースにもありますので、生産性向上とコスト効率化と合わせ、あらためて株主の皆様へ「お待たせしました」と言えるようにいたします。

当社を取り巻く事業環境は総じていえば、とてもポジティブです。
エンターテイメントの世界も大きく変わりつつあります。それらの変化の全てが事業機会というわけではないですが、当社が創業来進めてきたエンターテイメント分野のデータ、これらの利活用は今後ますます進みます。この大きな潮流、事業機会をどこまで捉えられるのか、これにより当社の成長のスピードやスケールが変わります。逆にいえば、この流れに取り残されるようであれば、当社の存在意義が問われます。
まずは足元の日々のデータサービスの質を上げ、現在お使い頂いているお客様の満足度をより上げていきます。そして当社データの活用する領域も現在のインターネット音楽・映像配信サービス以外の領域、例えばイベントやカラオケなども広げてまいります。小さな成果をお客様と共に丁寧に積み上げてまいります。

その上で、今、そしてこれからの三つほどの事業機会をお伝えさせてください。
まず一つめ、私たちなりの使命とも言えるのが、Next Music/Video Experience(次なる音楽・映像体験)、少し大きな表現ですが、ここに当社の次の大きな成長があります。
インターネットを経由して音楽を聴いたり、映像を観たり、という生活様式はもはや当たり前ですが、そのサービス形態はショート動画のプラットフォームの台頭などはありますが、少なくも音楽配信・映像配信いわゆるサブスクサービスは、この10年ほどもちろん性能の日々の改善はありますが、検索をして、レコメンドをされて、お気に入りがあって、ランキングがあって、という体験スタイル、サービス機能そのものは大きく変わっていません。これらの多くが海外発のサービス機能でもありますが、ではこの先10年、変わらない機能もあると思いますが、大きくいえばこれらの体験スタイル、サービス機能がこの先変わらない、ということはないと思います。
当社は創業来、曖昧で抽象的な人間の感性や感情をデータ化する、という取り組みを進めてきました。これらの独自のメタデータを活用し、また現在の生成AIの進化などを組み合わせ、新しい音楽体験、映像体験をサブスクサービスと掛け算しながら生むことが出来ないか、この機会に挑みます。当社単独ということではなく、現在お付き合いさせて頂いている音楽、映像分野の事業者様と共に日本発、日本ならではのエンターテイメントの楽しみ方の新しいフォーマットを開発してまいります。

二つめは、やはりグローバル、まずは日本のクリエイター、コンテンツの海外展開に当社データサービスをいかに連携させるか、これらは大きなテーマと事業機会となります。こちらもパートナーシップに基づき進めてまいります。コンテンツに関わる基本情報、関連情報、詳細情報、そしてファンの楽しみ方や企業とのコラボレーション、多様なエンターテイメントに特化したデータを活用し、日本の素晴らしいコンテンツ・作品・クリエイターの海外展開に役に立てればと考えています。

三つめ、IP、つまり音楽、アニメ、ドラマ、映画、コミック、ライトノベル、イラスト、Webtoon、ゲーム、演劇、またそれらを制作するクリエイターなどエンターテイメントに関する作品やそれにまつわる人や知的財産に関するデータサービスとなります。
たとえば、当社のデータを活用しまだ世に出ていないIPを発掘し、制作を支援し、タイアップなどマーケティングの支援を行う、という取り組みになります。
この分野は当社の感性メタデータ、感性AIならではで有用性が最も発揮出来る分野であります。多様な世界観やストーリーが繋がりクリエイターがより活躍出来る未来への覚悟を決めて取り組んでまいります。
お気づきになっている方もいらっしゃるかも知れませんが、この三つめの事業機会に当社が取り組んでいるTrig’s(感性ターゲティング広告)やTrig’s関連技術が連携することで、この三つめのデータサービスがより強固なものとなり、進めているエンターテイメント×感性マーケティングにおいていったんの成果となります。
Trig’sは費用先行にてまだまだ葛藤の最中にいます。前期の当社の赤字の大半がこの事業により生み出され収益化に至っておりません。一方でインターネット広告の世界もより変わってくると思います。良質なインターネット広告、本来の広告のあり方が問われる時代になる中で、Trig’sのような企業、ブランド、商品、サービスのこだわりや体験価値やパーパスを良質な媒体、コンテンツに連携させていくコミュニケーション(広告)が広まるよう、そしてその先にあるIP関連データサービスとの連携、つまり世界観とストーリーがエンターテイメントとマーケティングを繋ぐデータテクノロジーサービスの取り組みを進めてまいります。

ここで少し当社の係争中の件でお話しさせてください。
お知らせの通り当社は、2020年12月にシンクパワー社より、同期歌詞データの盗用という訴えを受け係争中であります。本件は2017年に端を発し大変長い歳月が経ちご心配している方もいらっしゃることと思います。係争中の事案ですので細かいことは申し上げることは出来ませんが、私は当初は、率直な言い方でいえば、言いがかりに近いものだと感じていました。当社の当時の開発者、チームも信じていましたし説明を聞いても納得しうるものではありました。しかしながら時間が経つにつれ、なぜそこまで言われるのか、と考えるにつれ、出来る限り先方の社長の立場に立ってものを考えるようになりました。またその過程では当初前提としていなかった先方のサーバーへのアクセスが開発者の自宅から行われた、という新たな事象も発見されました。
従いまして、そのような経緯も含め、重ね重ね出来る限り先方の社長の目線に立つことを心がけた上で、さまざまな調査をフラット、シビアに始めました。そしてその過程では、確かに言いがかりとはいえず、先方がいう疑わしい事象がある、というのは理解が出来ました。
その上で、当社のエンジニアチームはシンクパワー社が主張する当時の当社開発者の行為について調査し検証しています。現在のところ先方が大きく主張されている内容は見つかっておりません。今後も引き続きその調査・検証の結果をふまえて当社の主張を行っていくことになります。
いずれにしても、であるならば、まずはなぜその疑わしい事象が起きたのか、これを説明する責任が当社にあるとは考えています。社内外の協力により分かってきたこともありますが、そのあたりは今後の係争の中でお伝えしていくこともあろうかと思います。
いずれにしても、私が今言えることはそのようなことで、起きた事象に関しても、係争に関しても、先方に対しても、とにかく真摯に向き合う、本件に限りませんが、当社の基本的な価値観を大事に取り組んでまいります。

当社はこの6月で創業25年となります。25年経ってもまだ規模の小さな会社であり、そしてまだまだ日々もがいている、これは現実です。一方で、創業来追いかけてきたエンターテイメントデータサービスという事業でお陰様であらためて大きな事業機会に直面している、これも事実です。
この現実と事実をどのように決着をつけるのか、私自身が問われています。
低迷する株価、冴えない業績含めたさまざまな現実と見えてきた可能性、26年目を迎える今、まずはまたとない日々に感謝しています。
思えば、当社は、私は、どれだけ皆様の期待に応えたのか、どれだけ皆様の期待を裏切ったのか、そう思う日々です。
その中でも、光があります。あらためて成長のペースは上がる気配があります。
それはエンターテイメントとそれを創るクリエイターのお陰でもあります。このお手紙にお書きした大きな事業機会を必ず活かします。
その結果として、株主の皆様やクリエイターにも恩返しします。
一緒に戦っている社員や我々を信じてくれている取引先の皆様にも報いなければなりません。

株式会社ソケッツ代表取締役 浦部浩司今の状況は自分では情けなく思います。そのような中、この上なくありがたい26年目を迎えます。ありがとうございます。
精進し前へ進みます。

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