社長からのメッセージ(株主通信2021年6月より)

株主の皆様、半年に1度のお手紙となります。
いつもご期待や関心をくださり、ありがとうございます。

今回の株主通信を書くにあたりましては、「もはや言葉でなく結果で示して欲しい」という多くの株主の方々の声を想像しております。そのうえで、少しでもご理解を頂ければと思いつつ、このお手紙をお届けいたします。

まず、今、この瞬間の目の前の現実にまっすぐに向き合うところからお伝えできることあればと思います。当社には様々な事実(ファクト)がありますが、会社の全体像を定量的に見た場合、2つの側面、事実があります。
ひとつは、実に情けなく格好のわるい面です。
上場して10年超経ったにも関わらず、現在、時価総額はまだ20億円強と低迷し、ピーク時から売上も利益も減少しています。前期においては5期ぶりの赤字も計上しています。
おそらく多くの株主様に歯がゆく、じれったい思いをさせています。
つまりは皆様の期待にまったく応えきれていないというのは紛れもない事実です。

もうひとつの面は、この5年間で粗利率が、24%から47%とおよそ2倍となりました。通信会社様向けに開発や運用を中心に年間20億円ほどあった売上は、直近で1億円ほどとなりましたが、一方でデータライセンス事業がこの5年ほどで年間2億円から7億円となり、2015年に会社の売上の1割強であったライセンス売上は、会社の7割を占めるようになりました。ストック型、リカーリング型、サブスクリプション型などといわれるデータを活用したライセンスビジネスモデルの企業に、5年ほどもかかりかつ規模もまだまだですが、完全にモデルチェンジをしました。
またデータライセンス件数はこの5年で10件から43件となり、昨年も10件ほど増えてくるなかで、ようやくですが、エンターテイメント業界以外へのライセンス提供が進み出しました。

これらの事実から見える過去や未来はどのようなことか、自問しております。
情けない過去と見えてきた未来についてです。
そのうえで、真っ先にある気持ちは、感謝です。
ここまで、人の感性や感情を科学する、そしてそれが必ずこれからの社会に役に立つ、という曖昧で不確かな技術・サービスの世界にチャレンジできていることへの感謝でもありますし、社員ともども、日々思い切り仕事ができる環境への感謝でもあります。
このような感謝が前提ではありますが、やはり社長としては、とても情けなく、申し訳なく、という思いが強いです。

たしかにライセンスモデルの会社になる、と舵を切ったものの、もっとうまく開発売上なども守りつつモデルチェンジ出来たのではないか、ライセンス事業もこのような伸び率ではなく、もっとめざましい成長ができたのではないか、この5年の15億円ほどの投資はもっと成果に直結できるものではないのか、これらもまたすべて事実なのだと思います。

これらの事実に向き合いつつ、一方で技術的な進化、またソケッツにしか出来ないような独自性の高い開発は、まだまだ改善の余地は多いですが、創業以来、現在がここまででは一番良い状態だと感じています。

ここでいう独自性の高い開発とは、具体的にはどのようなもので、どのような方法で成果を生むものなのか、お伝えできればと思います。

当社の技術開発の元となるのは感性メタと呼んでいるデータとなります。
これは、人、体験、作品、商品などを取り巻く感情(エモーション)や状況(シチュエーション)、ライフステージ、ライフイベント、人間関係性など、様々な感覚的で定量的には見えづらいものをデータとして明示化し、かつ体系化するものです。このようなデータの利活用により、今まで目に見えづらかったものが見えてくることがあります。例えば、「その情報や商品を気になる、または購入したい理由」「自分自身もまだ気づいていない好きなもの、気になるものの発見」「こんな考え方、生き方、暮らし方をしてみたいという人それぞれの未来」などを見えるようにし、繋げていく力が感性メタにはあります。大量の統計的なデータで「これを見た、聞いた、買った人は確率的にこちらも気に入る」というアプローチも奥深く可能性のある技術だと思いますが、ソケッツはそうではなく、極めて曖昧な人の印象、感覚、嗜好などをデータでいったん見えるようにし、そのうえで、コンピュータで演算することを可能とします。それらを感性AIと呼ばれることもありますが、私自身はAIという枠だけで捉えるのではなく、とにかく、人の感性や感情を理解する技術で人や社会に役に立つこととはどういうことかを徹底的に追求していく、ということになります。
この独自性のある技術をどのように活かしていくか、ということにつきましては、現在、次のように考えています。

1つめは、当社の祖業でありライフワークでもある音楽や映像などエンターテイメント分野におけるさらなる活用です。
たとえば、自動車における音楽体験のアップデート(体験価値の向上)に使えます。自動車は私がいうまでもなく、安心、安全、環境が第一ではあると思います。そのうえで、今後自動運転の時代も来る中で、自動車と人の関係性にアップデートがあると考えています。大きく言えば、自動車がより運転者(同乗者含め)のことを理解し、会話なども通じて人と自動車がコミュニケーションする世界によりなってくると思います。今でもそのように見えるサービスが出ているもののそれらは人とクルマの会話ではなく、まだあくまでも検索の延長線上であります。そうではなく、感性AIは、新たな人と自動車のエンゲージメント(思い入れのある関係性)に役に立ち、かつ、そこに音楽が介在する余地があると考えています。もちろんAmazon Echo、Apple Siriなどの大変素晴らしいアプリケーションで、自動車における音楽体験のアップデートの可能性もあると思いますが、当社ならではの感性メタを活用したエモーション、シチュエーション、ロケーション、オケージョンなどを自動車から読み取れる情報も交えて音楽的に特化して解釈する取り組みで、この領域で成果を出したいと考えています。現在、自動車メーカー様とのPoCを2年がかりで進めており、何とか皆様に良い知らせをお届けできればと思います。また映像分野への感性メタデータを活用した取り組みも、より広がりつつあり、ビデオオンデマンド、ショートムービーサービス向け、ライブコマース向けなど、一段と進めてまいります。

2つめは、エンターテイメント以外の美容、ファッション、食、旅行、暮らし全般に関わる分野への感性メタの利活用となります。
この分野は2年程前に資生堂様との取り組みが始まり、試行錯誤も経ながら、成果(購入数や閲覧数の増加など)が出てきました。
当社は資生堂様の全ての商品に感性メタを生成し、それを活用して顧客への理解を深めることで、オウンドメディア(自社の告知媒体)やEコマースでの読了性、回遊性、購買率などを高める取り組みとなります。
5月より新たに集英社様の女性メディア向けに感性メタの提供も始まりました。
ここでも、メディアで紹介されている多くの記事、商品、サービス、体験向けに感性メタを生成することで、資生堂様と同様に読了性、回遊性、購買率などを高める取り組みとなります。
また前期には、人と住宅の関係性を感性メタを活用して表現する目的のもと、大手住宅メーカー様とのPoCを行ない、一定の評価のもと、第2フェイズに入りました。
このような取り組みはどれも、美容でもファッションでも食でも住宅でも、先に記しました「その情報や商品を気になる、または購入したい理由」「自分自身もまだ気づいていない好きなもの、気になるものの発見」「こんな考え方、生き方、暮らし方をしてみたいという人それぞれの未来」を見えるようにし、繋げていくことを目指す取り組みとなります。今後、この技術・サービスを業種業態問わず、より多くの企業様に提供できればと考えております。折しも、社会がプライバシーの保護の観点にてクッキーの利用制限という流れもあり、やはり業種業態を問わず、第三者データ(サードパーティデータ)の利用制限がかかるなか、いかに自社データ(ファーストパーティデータ)の充実を図るか、という事業環境があります。当社の感性メタは、それぞれの会社がお持ちの自社データにさらに掛け合わすことで、あらゆる企業様の自社データの充実、付加価値化に役に立てることが見えてきていることから、この技術・サービスの普及に努めてまいります。

3つめは、インターネット広告の分野となります。インターネット広告市場は今後も成長市場ではありますが、基本的には、大手SNS企業、検索企業はじめ既存の強力なプレイヤーが存在し、当社が今さら入る余地はありません。
そのなかで数少ないチャンスは、クッキーの利用制限に伴う市場環境の変化、そして現在、主目的である認知、獲得を目的としたインターネット広告の世界に、情報や商品と人とのエンゲージメント(思い入れのある関係性)を高める目的のインターネット広告のニーズも高まる可能性、となります。それらにおいては、従来の閲覧履歴や購入履歴に基づく広告ではなく、ユーザーが接している情報の中にある文脈(コンテキスト)を解釈し、その文脈にあった広告を出す、という技術・サービスへの可能性があります。
当社の感性や感情を科学する技術は、多様な複雑性のある文脈を解釈することが得意なだけでなく、さらにその情報に接しているユーザーの感情を推定することを可能とします。そこでは、「その情報や商品を気になる、または購入したい理由」「自分自身もまだ気づいていない好きなもの、気になるものの発見」「こんな考え方、生き方、暮らし方をしてみたいという人それぞれの未来」などにはたらきかけることで、結果的に、過去から追いかけてくる広告ではなく、未来からはたらきかけてくる広告として、人と情報と商品とサービスとの間で感情的な繋がりを生んでいきます。このような人と広告の間にあるエンゲージメント(思い入れのある関係性)の向上に目的を特化したインターネット広告に、当社の独自性のある技術を活用していきます。

そして、これら3つの可能性の先には、ブランドパートナーシップ、クロスエクスペリエンスの仕組みと定義している、個人と企業とクリエイターやアーティストが共感で繋がる新たなコミュニケーションプラットフォームの構築があります。

最初に申し上げましたように言葉でなく結果で示す、というのが当社、私が置かれている立場、現実だと思います。期待はしていたが、もうあなたやソケッツには付き合いきれない、という投資家の方も多くいらっしゃるかと思います。

そのようななか、当社は、今期業績予想を赤字予想としました。
キャッシュフローや財務基盤に影響が出るような赤字額ではないですが、とはいえ、当社にとっては大きな赤字額となります。この赤字が持つ意味や目的をお伝えできればと思います。
まず前提としては、既存の事業は成長します。そこでの収益も黒字となります。そのうえで、通常年間3億円ほどの先行投資を先に記しました独自技術を活用した新たな事業のスピードと精度を上げるために、当期においては4億円に増加する考えでいます。もちろん本来は、このような投資額を超える収益を上げることが必要です。しかしながら現在の当社はそこまでの収益力がありません。それでもこの投資はこのタイミングで、近い将来の可能性を具体的な成果に変えるため、情けない過去を振り切り、成長のスピードを高め、2年後に大きな成長を実現するために必要となります。

そもそも、開発や運用の売上が何十億円減ろうとそれを超える新たな事業を伸ばしていくのが、経営者の役割です。それが出来ていません。企業価値の指標でもある時価総額もまだまだ低いままです。経営者は、社員や社会に対して役に立つことと企業価値を上げていくことが責任だと思います。現在の当社の収益力から見れば、過大感はあるかもしれませんが、企業価値を上げるために何をすべきかを本質的に考え、2年後に向けて判断をさせて頂きました。

たくさんの方々の期待に応えてきていない現実を直視し、それでもまだ信じてくれている社員、取引先、株主、投資家の方々に感謝するとともに、筋を通すようにいたします。

株式会社ソケッツ代表取締役 浦部浩司

代表取締役社長 浦部浩司

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